1-4.拡散障壁,欠陥形成エネルギー,会合エネルギー

1-2節で,イオン導電率σが拡散係数Dとキャリア濃度cに依存することが明らかとなった.

それでは,拡散係数やキャリア濃度は何で決まるのだろうか.

その答えは,イオン導電体の組成が化学量論的組成(stoichiometry,ストイキオメトリ)か,非化学量論的組成(non-stoichiometry,ノンストイキオメトリ,不定比性)であるかによって異なる.

化学量論的組成とは,組成上欠陥を含まない組成であり,例えばLaF3である.

一方で,非化学量論的組成とは欠陥を含む系である.例えば,La0.9Ba0.1F2.9では,La3+の一部をBa2+で置換しているが,電気的中性を保つためにF空孔を含む.

化学量論的組成における活性化エネルギー

化学量論的組成において,活性化エネルギー=拡散障壁+欠陥形成エネルギー/2 で表される.

なぜ欠陥形成エネルギーのみ1/2なのかは別途述べる.

拡散障壁Emig(migration energy, migration barrier)とは,空孔の拡散に要する障壁(エネルギー)である.

欠陥形成エネルギーEf(defect formation energy)とは,欠陥の形成に要するエネルギーである.

非化学量論的組成における活性化エネルギー

非化学量論的組成において,活性化エネルギー=拡散障壁+会合エネルギー で表される.

会合エネルギーEasso(association energy)とは,ドーパント付近で安定に存在してしまう空孔が,ドーパントから離れるために必要なエネルギーである.

以上